鹿島歴史民俗資料館 海を越えた友情-魯迅と増田渉
2階「増田渉記念室」では、鹿島町片句出身の青年 増田渉が中国の文豪 魯迅と結んだ友情、魯迅・中国文学研究にかけた増田の生涯と業績を紹介しています。
少年時代から文学に親しんだ増田渉(1903~1977)は、東京大学中国文学科に在学中、当時の流行作家 佐藤春夫のもとに通い、中国小説の翻訳の手伝いなど始めました。卒業後も続けた翻訳の仕事に区切りがつき、1931(昭和6)年3月、増田は佐藤の紹介状を手に訪れた上海の内山書店で魯迅に出会います。
店主の内山完造から魯迅を紹介された増田は、魯迅から彼の著作についての講義を受ける機会に恵まれました。毎日午後、魯迅のアパートで行われた講義は、その年の暮れ増田が帰国するまで10か月に及びました。帰国する増田に魯迅は自作の詩を送りました。
郷里に戻った増田は魯迅の著作の翻訳のため、何度も魯迅に問い合わせの手紙を書きました。魯迅は丁寧に質問に答え、近況、子供の事や中国の情勢など記した手紙を添えています。ユーモアと思いやりに満ちた手紙からは魯迅の小説や評論とは違う一面が見えます。
後に増田は魯迅および中国文学の研究者として、島根大学、大阪市立大学、関西大学の教授を歴任しました。