松江歴史館・お城の見える博物館
松江歴史館は松江城の東側に隣接する博物館です。松江城の内堀に架かる北惣門橋を渡ると、正面に入口があります。館内各所から国宝松江城天守を望むことができる「お城の見える博物館」です。
江戸時代、松江歴史館が建つ場所には、松江藩家老の乙部九郎兵衛家と朝日丹波家の屋敷がありました。嘉永3年(1850)の「松江城下絵図」(画像は下が東)には、赤色に三つ葉葵の紋を配して表した松江城の東に、乙部・朝日・有澤・柳多(絵図では柳田と記す)・脇坂という、松江藩の上級武士の屋敷が集まる区画が描かれています。松江城に隣接する要地を、重臣が固めていたのです。
松江城側の塀の一部は長屋になっています。松江に唯一残る家老屋敷の長屋で、松江市指定文化財の「松江藩家老朝日家長屋」といいます。長屋には家来や使用人が住んでいました。
正面にそびえる松江城天守を借景とした日本庭園。出雲地方の様式にもとづいて造園しました。この庭園は枯山水(かれさんすい)で、水を用いず石や砂などで自然の風景を表現しています。景色の中心になる「正真木(しょうしんぎ)」は、出雲の庭園では定番のクロマツです。
松江城を仰ぐと屋根瓦が目に入ります。松江歴史館の屋根瓦は、一般に普及している右桟瓦(みぎさんがわら)、下から見ると断面が「へ」の字形に見える瓦、とは逆向きの左桟瓦です。かつて松江では多くの屋根に左桟瓦を使っていました。左桟瓦の建物は松江城下町の景観の特徴だったといえるでしょう。
日本庭園の隅に仙台御影の手水鉢があります。松江には、仙台藩主の息女が松江藩主松平家に輿入れする際、祝儀の品を船で運んだというエピソードが残ります。その船のバラスト(船体を安定させるための積荷)の石を加工して作ったと伝わる品です。
来館者を迎える玄関ホールからも松江城天守が良く見えます。美しい姿を楽しむことができる、おすすめのスポットです。